「日本はアブナくない」ブログの奇妙な主張

前回エントリーにおいて、数多くの大手新聞サイト掲載記事があるにもかかわらず「ほぼ沈黙している」とした、「日本はアブナくない」ブログのコメント欄で質問をした。すると、下記のような返答をいただいた(リンク)。

「1面・社会面等で大きく取り上げられたのは今日がはじめてです。新聞を隅から隅まで読む人ならともかく、たいがいの人にとっては今日はじめて知らされた、と言えませんかね…この程度の報道しかしないって、『ほぼ沈黙』だと思いますが、どうなんでしょうか。」

つまりは、ニュースバリューに見合った報道の扱いではないから、ほぼ沈黙なのだ、ということらしい。言葉の意味の無理な拡大解釈だが、比喩的な意味としてなら了解できなくもない。しかし、その前の(エントリ)のタイトルが「これは報道管制を受けてるマスメディアに対する…」とあるので、どうも「報道規制があったから記事を出さなかった」旨、当該ブログ主は判断していたように思える。そういうことなら、文字通り「ほぼ沈黙」だし、納得もできる。だが、そのような、報道させないという意味での「報道規制」は存在しなかったと判断できる(∵現実には継続して報道されている)。実際にあったのは、農林水産省の4/20付けプレスリリースにあるように、現地取材への自粛要請である。これはブログ主も懸念するように、口蹄疫拡大を防ぐための当然の要請であるが、報道そのものへの自粛要請ではない。

「沈黙」の含意するところについては、私は上記のように理解した。では、次の段階として、報道の扱いが小さかった、全国紙の一面で早くから取り上げるべきだったとする主張についてはどうだろうか。その根拠として、ブログ主は以下のような点を繰り返し強調している。

「GWで人が大量に移動し、潜伏期間の1週間が過ぎるのがそのあたり…」
「GWは人の移動が多く、口蹄疫の感染が広がるおそれがあります。宮崎県内の道路で、消毒を行っている箇所があります。協力するべきです。」

意味不明なのはこの点で、もしブログ主の主張は「一面で大々的に報道しないと、何も知らない人が都農町・川南町・えびの市の牧場に大量にやってくるので拡散する」ということらしい。しかし、農林省のプレスリリースにあるように、すでに4/23の時点で「移動制限区域(半径10km)及び搬出制限区域(半径20km)の設定等防疫措置を講じ」られている。GWに大量に人が動くのは事実だが、それはゾーニングされ殺処分が行われている牧場への人の出入りが多くなることを意味しない。また、一面で報道されなかったため「たいがいの人にとっては今日はじめて知らされた」のではないか、との見解を示しているが、これも違う。既に擬似患畜発生の時点から報道され始めており、そのために、口蹄疫が発生していた地域と関係ないところの牧場を訪れる観光客は減っているし(asahi.com マイタウン宮崎、5/13付け)、長崎の五島市に至っては市民に対して南九州への旅行自粛要請まで出している(西日本新聞、5/2付け)。

ブログ主の主張によれば、口蹄疫拡大防止のためには、全国民にあまねくこの事実を知らしめ、宮崎県を総「エンガチョ」状態にするべきだった、ということらしい(*1)が、西日本新聞の記事にもあるように、「畜産関係者以外にも自粛を求めるのは行きすぎ」というものだろう。

(*1)コメントで指摘があったとおり、ブログ主たる nodanger 氏の主張は観光客への防疫への協力・風評被害の防止・「感染地」訪問・通過の自粛をすべきだった、との由(5/14追記)。

農林水産省、宮崎県による迅速な処置により、現時点で発生地域は非常に限定されている。7万頭もの家畜が殺処分対象となったのは痛ましいことではあるが、それは防疫のため関係者が淡々と仕事をしているということの証左である。また、10年前の口蹄疫と比べて数が多いことは防疫が不十分だった証拠とはならない。というのは、ブログ主も指摘している通り、「潜伏期間」があるのだから、それが顕在化するまでの間には広まるということもあるだろう。同じ牧場の家畜をも殺処分対象にしなければならないということから、酪農農家の規模が10年前とは異なるのかもしれない。また、ウィルスの広まりやすさの違いがあるのかも知れない。だから、殺処分数の大小では、防疫措置の巧拙を単純には判断できない。

発生患畜の数はそろそろプラトーに達している。このまま防疫を続ければ必ず収束するだろうし、そうでなければならない。被害を受けた酪農家への資金面の援助も必要だ。
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by doopylily | 2010-05-13 19:09


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